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ワンダーFULL TOKACHI File.10 類まれなるクジラ

siowakkatop

シオワッカ(足寄町)

足寄町の市街から国道241号線を阿寒方面へ向う。
足寄特有のウネウネと続く長い道。
「日本一広い町」の冠は外しても足寄町は、広い町です。

やがて見えてくる「ラワンドライブイン」の近くから分岐する道道949号線(オンネトー線)。

螺湾の市街地から更に先へ進むと、足寄町名産北海道遺産にも制定されている大人の背丈も超えるほどのラワンブキの圃場があり、更にオンネトーへと至り、道は再び国道241号線につながります。ラワンブキ圃場の少し手前(螺湾市街から1.5㎞ほど)の左側で、山里の自然味あふれる景色に似つかわしくない大きな駐車場があります。
見える範囲には幹線道を挟むように続く足寄特有の山並みと螺湾川の流れだけ…
駐車場にある表示板には「シオワッカ公園」と記されていた。
ここに、とても奇妙で、そして成長し続ける奇岩があるのです。

シオワッカとは?

 シオワッカとは、アイヌ語の「シモチク・ワッカ」(飲めない水・毒水)からの命名と言われています。
ワッカは、知床の「カムイワッカ」や幕別町の旧地名「ヤムワッカ(清水のでるところ)」、稚内の語源も「ヤム・ワッカ・ナイ」であるそうです。
広い駐車場から幹線道を渡り(通行車両に注意)反対側に木製の階段がありました。車の中からは見えませんでしたが先に遊歩道が続いています。どうやら「シオワッカ」は、この下にあるようです。

そこに現れたものは果たして…

シオワッカ全景

なにこれ?クジラ…?

博物館鯨類骨格標本 ついさっきまで足寄市街にある足寄動物化石博物館フォストリーあしょろでクジラの骨格模型を見てきたばかりなので、なおさらそう思ってしまいました。
 幹線道脇の斜面から大きなクジラが顔を出しているような様子。でもまさか、こんな形でクジラが?
 その正体はともかく、少し湿り気を帯びていて回りの土とは明らかに異質なものがそこに埋まっています。
 足寄町で海洋動物の化石が見つかるという事は25,000年前、あるいはそれ以前の日本、そして足寄町の大部分は、海だったということ物語ります。シオワッカのあるこの地点は、現在海抜165メートル。
化石ではないとしたら土中から顔を出しているこの丸いものは何でしょう?
シオワッカ公園ににある解説板では、こう説明されています。

 シオワッカは、ドームの頂上から流れ出る冷泉から炭酸カルシウムが沈殿し、ドーム状に成長したもの(石灰華)です。 ここでは炭酸カルシウム鉱物である方解石が主となっていますが、世界的にも稀な炭酸カルシウム鉱物3種類が確認されました。春先にはファテライト、夏にはモノハイドロカルサイト、冬にはイカアイトができており、これら3種類の炭酸カルシウム鉱物が冷泉から、また同じ場所でできるのはシオワッカだけであり、中でもイカアイトの陸上での発見は2番目(もう1か所は、カリフォルニアのモノ湖)に当ります。

[( )内補足]

イカアイト※イカアイト(イカ石)とは、鉱物(炭酸塩鉱物)の一種で、最初の発見はグリーンランド南西部のイカ・フィヨルド。(イカに似ているからではない…)
 準安定状態でのみ存在し、冷水から取り出すとすぐに崩壊し、一水方解石もしくは無水和物の炭酸カルシウムと水に分解される。このため「融ける鉱物」といわれる。
希産鉱物ではないかと思われているが、それはサンプルの保存の難しさに起因すると思われる。

 南極のブランスフィールド海峡、東シベリアのオホーツク海、サハリン沖、カナダブリティッシュコロンビアのサーニッチ入江、さらにコンゴ沖の海底扇状地など高緯度地域の海底地層から発見されている。
※モノハイドロカルサイトとイカアイトの両方が生成されているのは、世界でもこのシオワッカのみです。

鯨の頭のようだ

 シオワッカの場所は道東を南北に横断する大断層である網走構造線の数100㍍ほど西に位置しています。

シオワッカの鉱泉は河岸段丘の堆積物中より湧き出ていますが物理的探査によると、その下の鮮新世の本別層や更にその下位の白亜紀の仁頃層群中より垂直に上昇してくるものであるらしい。

 ようするに温泉に含まれた石灰分がドーム型に固まり、今なお成長し続けているというものなのです。しかし、この大きさになるまで200年ほどかかっているらしい!
 この世界的にも類まれなる奇岩は、天然記念物として足寄町文化財第一号に指定されました。
専門学者の調査・研究によってシオワッカが、いかに希少なものかがわかりましたが、初めにこれを見つけた人は何だと思ったでしょう。

シオワッカ前

石灰華とは?

 炭酸カルシウムとか石灰華など、わかるような…わからないような難しい代物ですね。
簡単に解説すると老舗の温泉旅館のお風呂場で浴槽や洗い場の床、蛇口の根元にまで茶色やクリーム色のコンクリート状の物体で塗り固められたようになっているところを目にした方は多いと思います。これも「石灰華」と呼ばれる炭酸カルシウムの成分が沈殿して固まったものです。(まれに珪酸や石膏を主成分とするものもある)
 私の知るところでは上士幌町の幌加温泉の浴室の状態が分かりやすい例です。

ホロカ温泉旅館の石灰華

幌加温泉(上士幌町):ホロカ温泉旅館(現在休館)浴室の石灰華

幌加温泉鹿ノ谷露天風呂の石灰華

同温泉:旅館鹿ノ谷 露天風呂の石灰華

 石灰華は不思議な景観をつくり出し、観光名所になるところも多い。
沸騰泉の噴出口に堆積して塔の様に成長したものは「噴泉塔」と呼ばれ、静かに湧出すると横に広がって堆積すると「石灰華ドーム」が形成されます。湯の滝の壁に付着して柱状に成長したものは「石灰華柱」などと呼ばれ、静かに流れるところでは鍾乳洞で見られるような「千枚田」の光景を作りだすことがあります。

 でも温泉中にはいろいろな成分があるのに、どうして炭酸カルシウムが沈殿するのでしょう? 塩や重曹の沈殿があってもよさそう…。

 それは、炭酸カルシウムが他の化合物に比べて非常に水に溶けにくいということなのです。

 通常、1リットル(40℃)の水に食塩は約270グラム、重曹だと約120グラム溶けますが、炭酸カルシウムは0.2グラムほどしか溶けません。このように限度いっぱいまで成分が溶けている状態を「飽和(ほうわ)」といいます。

 自然界で塩や重曹の成分が飽和状態になるのは、乾燥地の塩湖でまれにある程度ですが、炭酸カルシウム成分はそれらより1/1000以下で飽和状態になるため、多くの温泉は湧出するときの条件(炭酸ガス圧力の低下・phの変化)で炭酸カルシウムが沈殿しはじめるそうです。

それにしても、自然は実に不思議な光景を私たちに見せてくれるものですね。

シオワッカ入口の階段

 

 

果てしない大空と 広い大地のその中で~♪

想いを馳せるのは、目に映る景色だけではなく
この町では、足の下にもヒトの時代すら超越した多くのロマンが眠っています。

螺湾川

自然と足が寄る町 足寄町

 

化石・鉱石の発掘体験もできる
足寄動物化石博物館フォストリー足寄
「とんとん」でのご紹介はこちら↑


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