- 2015-05-27 (水) 23:28
- ワンダーFULL TOKACHI | 観光スポット
- 投稿者:ケラアン
トブシの滝・屏風岩の滝(足寄町)
足寄には滝が9箇所ある。
一番有名なのが『オンネトー湯の滝』。ほかにも『巨岩の滝』『白糸の滝』『白藤の滝』『屏風岩の滝』『トブシの滝』『二段五丈の滝』『朝霧の滝』『美利別の滝』。足寄町史のグラビアページにその全ての写真が掲載されているの町の公式なものとされている。
この多さは山間の町ならではですが、なにしろ広い足寄町。町内に分散する滝を一度に巡ろうとすると1日では厳しいのかもしれません。
知名度が高く、比較的行きやすいのが国道241号線(もろこし街道)を阿寒へ向かう途中のオンネトー線から行く「湯の滝」。遊歩道が良く整備されています。(途中、徒歩になるので遠いのですが)
同じく241号線を走り、足寄峠付近の林道から向かう「白藤の滝」も近くまで車で寄れるため行きやすいところです。(若干足場の悪いところを歩きます)
トブシの滝
一方、「道の駅 あしょろ銀河21ホール」前を通る国道242号線を陸別町方向へ向かった途中の『斗伏(とぶし)』地区にあるパンケトブシ川の国道際に流れの小さな川ながら涼しげな飛沫をあげる『トブシの滝』がある。
『斗伏』の由来はアイヌ語の『トプ=ウシ=イ』が語源で
トプ(クマザサ)
ウシ(群生している)
イ(ところ)
となり、『クマザサだらけの土地』といった意味とですが、これに「斗伏」と漢字が当てられたのが現在の地名。
これが明治の初期には『都富資』と記述されていたこともあったという。
242号線沿線の上利別を過ぎ、大誉地へ至る手前に「斗伏坂線」の入口があり、そのすぐ脇を流れているのがパンケトブシ川。
車を寄せると『トブシの滝』の表示板が見えた。(手前に駐車スペース有り)
高台を割るように流れる一筋の川。すご先に『トブシの滝』が見えた。
両側はゴツゴツした固そうな岩盤が露出する自然味あふれる景観は、すぐ後が整備の行き届いた国道とは思えないほどです。
この滝、わりと近年まで景勝地として認知されておらず、足寄町役場へ滝の名前の問い合わせがあったことから、斗伏の地名より『トブシの滝』と命名。
はれて『足寄の滝』として認知されたのですが、町に9つある滝。そのすべてが観光ガイド誌などで紹介されているわけではないようです。
(滝のある場所が到達困難、かつ遊歩道の整備を要することではないか?)
この『トブシの滝』、川そのものに勢いはないものの固い岩盤を滑り降りる飛沫の乱舞はたいへん涼しげで、近づきやすい所でもあることから多く人が立ち寄っていきます。
足寄町のキャッチフレーズに「自然と足が寄る町」という名コピーがありますが、寄り道スポットが多いところがこの町の魅力に他なりません。
すぐ先にある秘境
ところで、この国道脇の涼域には気にかかる看板がありました。
手書きによるもので、この川の上流域もうひとつ滝があるという。
それが足寄名滝のひとつ『屏風岩の滝』。
調べてみたところ、林道へからエゾシカ除けのフェンスをいくつか越えた先にある滝で、6枚の屏風を並べたような岩盤に囲まれたなかなかの秘境らしい。
でも、途中から徒歩で進まねばならないことと、検索して見つけたサイトの紹介では林道の途中に崩落があり進めなくなっていると読んだ。
「滝まで行くのは無理かもしれないな…」
そう思いながらも行けるところまで行ってみるw (ダメなら『通行止め』になっているだろう)
簡略図をたよりに斗伏坂道線を登りきるとすぐ、農家の軒先に滝の案内板があった。
「屏風岩の滝」へ至る道は農家の庭先の倉庫壁に取り付けられた、この看板を目印に先へ進む。
道は林道というより畑の中を縫う農道の様子。 程なく雑木が密集する鬱蒼とした地帯に入り、いよいよ林道らしくなります。
や視界に金属製の網を張り巡らせたフェンスが入ってきました。これは、エゾシカが畑の中に進入し、作物を荒らされないようにするためのもので、足寄・陸別や山沿いの地域でよく見かける風景です。(途中、右側にスェンスの間に赤いゲートが見えますが、そこではなく更に先へ進む)
滝は、柵の向こう側にあるということですが、人の背丈を越える柵を越えていくのは容易ではありません。
事前の調べによると、「ゲートを4箇所開け閉めする」とあり、出入口は装備されているらしい。
やがて道を塞ぐゲートに突き当たる。ゲートに「屏風岩の滝」の表示を見かけ「ここで間違いないw」と、ひと安心。
車で近寄れるのは、ここまでで先は徒歩で向かう。
ゲートの向こうは営林作業の様子もあり道の荒れている箇所やぬかるみも見える。
長靴、帽子、手袋、虫除けスプレー… そして一番大事な『クマ除けの鈴』。それも3つ着けて『クリスマスのトナカイみたいだなぁ…』と思いつつゲートへ。
ところで、ゲートは扉というよりもパイプに繋がった金網のカーテンを鎖で固定してあり大変重い上、開けた葉は良いが閉めるのも骨が折れます。
4か所のゲートは、金網カーテン状 → 大きな片扉 → 金網カーテン状 → 小さな扉 と続きますが、行き帰りの開け閉めはお忘れなく。
二つ目のゲートを過ぎたところから景色は渓谷沿いの林道に変わった。道筋には幅があり、わりと平らで山菜畑のようだ。
「おや!?」
気がつくと、右手側の山際は大きな岩盤がそびえ、いよいよ秘境感が増してきました。(と、ここまでは楽観的)
古生代の哺乳類アショロアの化石が発見された足寄町ならでは雰囲気です。(このあたりの岩盤もその時代のものであるかは不明)
歩を進めると岩盤の光景がどんどん拡大していき、露出しているというよりもそびえ立っているという光景に変わってきた…。
旧道とかつての名所
国道242号線は利別川沿いを通る道。
起点網走市から終点帯広市までを結ぶ道で、特に足寄郡陸別町から国道38号・幕別町明野交差点の区間(十勝総合振興局内の単独区間)を通称『陸別国道』と呼ぶ。
1954年(昭和29年)3月30日
北海道道30号留辺蘂西足寄線(常呂郡留辺蘂町 – 中川郡西足寄町)、北海道道34号幕別西足寄線(中川郡幕別町 – 中川郡西足寄町)として道道認定。
1963年(昭和38年)4月1日
二級国道242号網走帯広線(網走市 – 帯広市)として指定施行。
1965年(昭和40年)4月1日
道路法改正により一級・二級区分が廃止されて一般国道242号として指定施行。
足寄町と陸別町を結ぶ区間は利別川沿いを走るとはいえ、蛇行する川は何度も国道と交差する。
旧道道以前の時代は全道的に道路は質よりも長さ(距離)に重きが置かれ、充分な整備を行うには予算が不足していました。
木造の橋は度重なる水害に流失。改善もままならず、代わりに施設の渡し場が橋の代わりを担っていたところも少なくはありませんでした。この地域でも同じような状況の中、必然的に川を迂回するルートがとられ険しい「一服峠」など当時の道路事情を思わせる名の道も残されている。
川を避けるように、そして川と同じように蛇行する道。
交通(流通)の便を改善することで内陸地の過疎化を防止の目的により帯広土木現行所により河川橋の永久化工事は進み国道242号線へと昇格する。しかし、新設された国道が舗装化整備されるには和45年以降まで待たなければならなかったようです。
その整備計画の中で旧道の一部が主要道路から切り離されていった例は、けっしてここだけのことではありません。
「屏風岩の滝」を目指したとにき歩いた林道は、この国道242が全通するより前の時代に使われていた道であったらしい。
道筋は「下斗伏第二林道」と名付けられているものの元・主要幹線道と聞けば、なるほど思わせるほど広く歩きやすかった。
国道開通以前、旧道道が池田と北見を結ぶ道で、この辺りで滝を見ながら荷馬車が行き来していた。滝の近くでは昭和初期に水車を動力にした薄皮や「まさ」をつくる経木(きょうぎ)工場が稼動していたという。
上利別、大誉地の子どもたちは、遠足で「屏風岩の滝」にを訪れ、滝の周りで弁当を広げ滝の脇も登って遊んだ。
小さい頃、家族旅行で通った道。
大人になって自分でハンドルを握るようになり、その記憶を辿ろうと思い出の道を走ってみると違和感を覚えることがある。
黄金道路、日勝峠、三国峠…道は常に進化し続ける生き物のような存在です。
記憶が曖昧だったわけではなく、道も私と同じように成長し続けてきた証。記憶の道も、姿は変われど、残っているものなのでしょう。
それが人々の日常から忘れられることになっても。
自然に還る途中の崖縁の道。わりと近いところから川の流れる音…いやあれは滝、屏風岩の滝に違いない。
滝の壮観な姿は見えないかと谷底を気にしながら進んだところに思いも寄らない景色が現れた。
山側の岩盤はさらに高くそびえていたものの、見るからに危なっかしい。
画像からでは伝わりませんが、進むのを止めて戻ろうか…と思わずにいられないほど威圧感があった。
かつての名所「屏風岩」の眺めである。
「屏風岩の滝」は、この岩の近くにあるため、この名が付けられたらしい。
上士幌町の「ぬかびら源泉郷」へ至る道の途中にある「鱒見覆道」手前の音更山道碑付近にそびえる「柱状節理」とは違い、粗挽きの砂岩のイメージのする巨岩の下には大きな岩石ゴロゴロしており、破片が堆積し小山を作っているところもある。
「急いでお通りください」の文字になおさら恐怖を感じた。
これがかつての道道。これは迂回しても仕方ないところもありますね。
しばらく岩盤を観察したのち、先へ進むことにする…
「急げ」と言われても急げない足場の悪い地点をなんとか通り過ぎカーテン状の第3・第4ゲートを越えた。
広がる景色は、すでに鬱蒼としたものではなく、大きな空とそれを二分する稜線の景色に変わります。
滝の音はいよいよハッキリとして、その音に誘われままにクマザサの斜面を下りていく。
これが「トブ=ウシ=イ」らしい景色であるのかもしれません。
勢いのある滝から生じた飛沫は風に乗って頬をかすめていく。
この辺りの草花はマイナスイオンたっぷりの流域で潤わされイキイキとしている。
同じ空気をあびて、このプチ冒険は、冒険とは言えないのかもしれないけれど大きなものを得られたような気がしました。
あの道を戻るかと思うと… ちょーっと憂鬱でしたね。
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